大判例

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東京高等裁判所 昭和27年(う)736号 判決

刑事訴訟法第三百三十五条に「法令の適用を示す」とあるのは認定した犯罪事実に対する実体法の適用を示すという意味である。しかし、「法令の適用」という以上、判決において法令を適用するに当つては、判示事実がいかなる実体上の刑罰法令に該当するかを明らかにするばかりでなく、法令の適用を通じて自ら処断刑が明らかに導き出されるような説示をすることを必要とするものと解すべきである。それ故、刑法総則的規定の如きは、右のため、とくにこれを引用する必要があれば格別、然らざる場合においては、これを適用した趣旨の見るべきものがある限り、強いて、一々該規定を判決に明示する要はないものというべきであろう。

ところで原判決を見ると、その主文第一項には「被告人大村亮一を左記第一の九事実につき、懲役弐月に其の他の事実につき、懲役壱年に処する」という記載があり、なおその理由の第一の(九)には、被告人は昭和二十六年十一月二十六日清水市旭町神田よしの方で塚田篤三所有の黒革製短靴一足を窃取したとの旨の記載があり、更にその証拠とある項には、被告人は昭和二十六年十一月七日清水簡易裁判所で窃盗罪により懲役八月(三年間執行猶予)に処せられ、該判決は同月二十二日確定した旨の記載があること及び原判決の記載によれば、前記第一の(九)の罪を除く爾余の原判示の罪全部の日時が右判決確定前であることが明らかであることを総合して考えてみれば、右確定判決を経た罪と前記第一の(九)の罪を除く爾余の各罪とは、刑法第四十五条後段の併合罪であるが、右裁判が確定した日以後に犯された原判示第一の(九)の罪と、原判示の爾余の各罪とは、併合罪の関係に立つものではないことが明らかである。換言すれば、原判示の各罪のうち、前者の罪と後者の罪とは確定判決によつて両断せられる結果、その間には併合罪の関係がないのであるから、原審が前者の罪と後者の罪とを二個の主文をもつて各別に有罪の言渡を為したことは、以上の経過に徴して明らかにこれを理解することができるのである(従つて、原判決主文中に左記第一の九事実とあるのは、原判示第一の(九)の事実の誤であることが明らかである)。それ故、原判決が刑法第五十条の規定を挙げて右の経過を説明していないことはまことに所論のとおりであるが、主文において二個の刑を言い渡したことが、全く同法第四十五条後段及び同法第五十条の趣旨に基くことは、原判決を読んでみれば容易に理解することができるから、原判決には何等所論の違法はなく、論旨は理由なきものである。

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